がんの患者さんの家族がすべきことは何?

●がんの患者さんの家族がすべきことは何?

こんにちは。加藤隆佑です。

先日、あるミーティングで、とても考えさせる事例がありました。

プライバシーの問題があるので、個人を特定できないような形で、みなさんとシェアしたいと思います。

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60歳代の卵巣がんの抗がん剤を受けている方がいらっしゃいました。卵巣のがんの方は、落ち着いてきました。たまたま、血尿がでたので、泌尿器のドクターにみてもらったところ、膀胱がんが新たに見つかったのです。

主治医からは、「膀胱を全部とれば、治りますよ。」
家族からは、「治るんだったら、がんばろうよ。」

と言われました。

ご本人は、卵巣がんの治療で、体力が落ちていました。精神的にも疲れていました。

しかし、医師や家族からの勧めが強く、気は進まないけど、治療を受けることにしたのです。

入院前日に、ある友人に、「私は治療を受けたくない。体力も落ちているから、生きて戻って来れないかもしれない。だけど、がんばるよ。しかたないの。」と言ったのです。

そして、入院し手術を受けました。しかし、手術はうまくいかず、もう一度手術を受けることに、なってしまいました。

その結果、体の状態は非常に悪くなり、本人の精神的な限界もきています。

病院からは「もう一歩だから、頑張りましょう。」
家族からは「治るといわれてるんだよ。頑張るしかないでしょ。」

と、言われるだけです。

ついに、すべての人に心を閉ざしてしまいました。治療にも、協力をしなくなり、すべてを拒否しました。

そして、以前、入院前に気持ちを打ち明けた友人に電話して、「私はこの病院で殺される。家族も病院も、私の気持ちを分かってくれない。また手術を受けさせられる。」

と言ったのです。友人はすぐさま病院にいって、話を聞きました。その結果、少し気持ちは落ち着いたようです。

(ここまでが、その事例のお話です。)

その友人というのが、実は他の病院の看護師で、今回のミーティングで、そのことが議題にでたのです。

なぜ、ここまでご本人を苦しめることになってしまったのか?考えてみましょう。

私たちは、治るかもしれない治療法があったら、勧めると思います。家族も同じです。大切な人には、治ってほしいからです。

その治療が全く副作用もなく、苦しみが伴わないものであれば、多少強引に治療を受けてもらっても、100歩譲って良いかもしれません。(本当は避けた方がよいです。)

しかし、がんの治療はそうではありません。どうしても、不確定な部分というものが、付きまとわります。

治療したけど、再発するかもしれない。
手術したけど、その結果、思わぬ合併症で命を取られるかもしれない。

不確定的なところがある以上(もちろん、そうでなかったとしても)、ご本人の気持ちをしっかり、聴いてあげることが大切なのです。

それを今回のケースでは、しっかりしてなかったのが、すべての問題の原因だと思います。

本人が、自分の気持ちを素直に言わなかったから、良くないのではと言われる方もいらっしゃるかもしれません。

実は、アドバイスを受けることにより、心の負担になることもあります。

自分としては、今のままでいいのに、家族にそのことを説得しないといけない。しかし、治ると言われた治療法があるのに、受けたくないということを、説得することは、なかなかできないな。

家族や医師の善意や思いに、応えないといけないのではないか?そのような思いで、自分の正直な気持ちを言えないことが多いのです。

そのようなことを考えると、家族は、まずは思いを聞くことが大切なのです。それをしないと、家族の善意のつもりの言葉が、ストレスにしかならないのです。

「思いをきく」ことが大切なのですね。それでは、どのように思いを聞いたらよいのでしょうか?

中立的な立場で、聞くことが大切です。治療を受けてもらうように説得しようという気持ちではダメです。

すなわち、意見を述べずに、ただ、うなづくだけでもよいでしょう。時には、抱きしたり、一緒に泣いたり。

そのようなことにより、家族という存在が「自分のことが分かってくれる存在」になります。がんの家族をサポートをする上で一番大切なことです。

しかし、大切な家族に治ってほしいという思いが、それをすることを難しくすることでしょう。

難しいけど、ちゃんと聞いてあげるとどうなるか?

本人が自分の考えを整理することにつながります。その結果、生きよう」という思いがでてくれば、自分から治療を受けるといわれるかもしれません。

治療を受けないという選択になることもありますが、生きようとする力は、無理に説得させられたときより、強いはずです。

遠回りのようにみえて、ただ聴いてあげることが近道になるのです。「北風と太陽」の話に少し似ているかもしれません。

まとめますね。

がんの治療は、精神的につらいもの。家族には、治療をすすめらるよりも、自分の話を聞いてもらってり、静かに見守ってほしい存在でいてほしいのです。

本人から治療のことについて、聞かれたときにだけ、家族は対応したらよいです。家族には、がん以外の楽しい話をしてほしいと思います。

もちろん、がんのことも家族の方は気になりますよね。聞くとしても、「がんの治療つらくない?」、そんな位でよいと思います。その一言で、いいたいことを話たいときには、たくさん話してくれるものです。

もっとしっかり薬のもうよ。
なんで、治療をうけないの?
他の病院の〇〇先生は、もっと腕がいいから行ってみようよ

そのようなことは、病院の医師に任せれば良いのです。もしくは、本人が望んだときに提案すればよいのです。

それまでは、家族には、聞き役になって、静かに近くで見守っていてほしいと思います。

編集後記

今日の話は、とても難しいテーマだと思います。医療従事者として、正しいと思われる治療を提案すると同時に、患者様の思いを中立的な立場で聞くことが、要求されます。

私は、そのことを常に念頭には置いているものの、患者さんの気持ちより、治療をすすめることに意識が向かうこともあります。

家族を応援する立場になると、私は、さらに感情がはいってしまいます。私の母と父はだいぶ年をとっています。持病もあります。

1年に1回くらいしかあえません。会っても、「ちゃんと薬のまないの?」「なんで検査うけないの?」と、つい口にしてしまうこともあります。

親が私に求めていることは、アドバイスではありません。まずは、気持ちを聞いてほしいことだと思うのですが、つい口がでてしまうのですね。

このメールマガジンを書きながら、私自身のことも、反省しています。

家族の話を中立的に聞くのは難しいです。だけど、それをすることによって、苦しみが和らぐことは間違いありません。

完璧にできなくてもよいでしょう。それを意識することが、よりよい治療に結びつく一歩になると思います。